猛暑で収穫量も品質も低下する現実
登熟期の気温が高すぎて品質が低下する「高温登熟障害」が、近年、西日本を中心に、年によっては全国にわたって発生し、大きな問題となっています。その症状は、米が白く濁る「白未熟粒」、偏平となり縦溝が深くなる「充実度の低下」、亀裂が入って割れやすくなる「胴割粒」が発生、などです。
これらの症状は、いずれも検査等級の低下をもたらすほか、砕米などによる精米歩留まりが下がり、精米ロスや症状が著しい場合には食味の低下をもたらします。玄米から精米する割合は通常90%とすれば、80%近くまでになることもあります。
地球温暖化の進行に伴い、今後さらに被害が広がる恐れがあり、その対応は一層重要になってくると考えられます。

高温障害のおコメは白濁したり着色した粒に
特に西日本のお米品質は低下
登熟期の気温が高すぎて品質が低下する「高温登熟障害」が、近年、西日本を中心に、年によっては全国にわたって発生し、大きな問題となっています。その症状は、米が白く濁る「白未熟粒」、偏平となり縦溝が深くなる「充実度の低下」、亀裂が入って割れやすくなる「胴割粒」が発生、などです。
どちらも登熟の不良で、原因は、夜温が高すぎることで、稲の呼吸が旺盛になり、でんぷんの蓄積が出来なくなることによることが一般的です。稲も含めて植物の呼吸は温度格差が無いほど、栄養分が蓄積できなくなり、コメが充実しなくなります。
地球温暖化の進行に伴い、今後さらに被害が広がる恐れがあり、その対応は一層重要になってくると考えられます。

近年の高温障害は、お米作りを難しくしている
高温障害に強いお米とは
しかし、多くのイネの品種の中には、登熟期の高温下でも玄米の品質や収量が低下しにくい特徴を持っている品種もあります。高温に強い品種の代表的な高温耐性品種には以下のようなものがあります。
にじのきらめき:高温登熟性に優れ、出穂後20日間の日平均気温が28℃の高温条件でも一等米の基準(整粒歩合70%程度)を維持できます。穂が葉の中に隠れることで穂温の上昇を抑える「高温回避性」も持ち、玄米の外観品質が高温でも低下しにくいことが実証されています。
新之助:新潟県が開発した高温耐性品種で、猛暑でも高品質を維持できます。コシヒカリより成熟期が遅いのも特徴です。
にこまる:高温登熟条件でも品質が低下しにくく、玄米の外観品質が良好です。食味もコシヒカリやヒノヒカリと同等と評価されています。
さがびより:ツヤがあり、粒が大きく、もっちりとした食感で、甘みや香りも良い高温耐性米です。高温条件でも品質が安定しています。
元気つくし:粒がしっかりし、ツヤと粘りがあり、登熟期の高温でも品質が落ちにくい品種です。
つや姫:山形県の品種で、高温登熟条件下でも品質が安定していると評価されています。山形県が開発したブランド米。
雪若丸:山形県で開発された品種で、高温に強い品種です。山形県ではつや姫以上に高温に対しての実績は高く評価され、今後の品種改良にも引き合いが強まるかの性があります。
富富富:富山県が開発した品種によると, 高温障害に強いブランド米です。
てんたかく:登熟期の高温でも白粒発生がしにくく、適度な粘りと柔らかさを持つ高温耐性品種です。
まとめ:「にじのきらめき」「にこまる」「さがびより」「つや姫」などは、高温障害に強いお米の代表的な品種です。これらの品種は、地球温暖化や異常気象が進む中でも安定した品質と収量を維持できるよう開発・普及が進められています。

庄内平野でも9月気温が真夏並みの年も多くなった
他にも期待できる品種はあると
上記の品種の他にも続々と耐暑性の高い新品種が出来ています。しかしまだ実績が浅いのとデータの蓄積が少ないことと、地域の事情の違いなどがあり、絞り込みが不十分なのが現状です。
今後、試験場や生産現場のデータが蓄積され、又それぞれの品種の実績が積みあがり始めてこの中からさらに、高いパフォーマンスを発揮する品種が明確化されていくことでしょう。
「笑みの絆」「恋の予感」「秋はるか」「きぬむすめ」「おいでまい」「彩のきずな」なども高温耐性を持つ品種として知られています。
そのほかにも、高温耐性が高い米の品種には、以下のようなものがあります。
1,きぬむすめ、2,にこまる、3,なつほのか、4,ふさおとめ、5,てんたかく、6,にじのきらめき、7,ふくまるSL、8,ゆうだい21、9,こしいぶき、10,みずかがみ、11,元気つくし、12,くまさんの力
これらの品種は、登熟期の高温下でも玄米の品質や収量が低下しにくい特徴を持っています。また、「コシヒカリ」「農林6号」「農林22号」「越路早生」「台湾育成品種群」なども高温でも品質が良いという評価が高いと報告されています。

稲刈は夏の気温の中厳しい作業となってきた
高温障害に打ち勝つ耐暑性品種とは
稲が暑さに強いかどうかというのは、つまり、35℃以上の高温に耐えられるかどうかということで、この性質を「耐暑性」といっています。
これには大きく分けて、稲が育つかどうかのギリギリの限界温度に近い温度あたりで、稲が生き残れるかという耐性と、生育できる気温の範囲のうちで、わりと高い気温になったときに耐えられるかどうか(高温登熟性)の2つの意味があります。
ふつう「暑さに強いのか」というときは、米が実る時期(登熟期)が高温でも収量が落ちないこと、あるいは米の品質が良いということをさしています。
花がさく開花期ごろの高温は、米が実らない「不稔(ふねん)」を引き起こします。しかし、フィリピンで開発された品種には、暑くても不稔が少ないものが見つかっています。
※登熟(とうじゅく)=米が実ること、米が実っていくこと

日本を代表する米どころ庄内平野喪も高温障害が頻発
暑さに強い品種の開発が急がれる
南の地方で気温が高い時に実った米の品質が落ちる原因は、暑さのために、特に夜の気温が高いと、米にでんぷんがうまくきれいに貯まらないことです。きれいに貯まっていかないと、米の一部分が白くなってしまう現象が起こります。
こうした白い部分が出にくい品種も見つかっています。高温でも品質が良いと報告された品種は、コシヒカリ、農林6号、農林22号、越路早生、台湾育成品種群などです。山形県の「はえぬき」も高温でも品質が安定しているという評価があります。
暑くても稲が元気に米を作れる能力があることはとても大事なのですが、稲の耐暑性については、まだまだ解決しなければいけない問題が多く、現在確実に品種改良できる方法はありません。
高温になっても不稔になりにくい品種、米の品質が落ちにくい品種など、さまざまな品種があることは確かなので、暑さに強い品種をつくり出すために努力が続けられています。

庄内平野は最上川が潤すコメ作りの平野
農研機構が開発した耐暑性品種とは
この度、農研機構は、コシヒカリより多彩な特徴を併せ持った新品種「にじのきらめき」を育成しました。
これまでの高温登熟耐性品種の多くが備えていなかったイネ縞葉枯病等に抵抗性があり、農薬散布を減らした低コスト栽培が可能です。また、北陸および関東以西の幅広い地域で栽培が可能で、広く普及が見込まれます。
これらのニーズに対応するため、多彩な特徴を併せ持つ水稲品種「にじのきらめき」を育成しました。(平成30年、品種登録出願)
農研機構:農研機構(のうけんきこう)は、我が国の農業と食品産業の発展のため、基礎から応用まで幅広い分野で研究開発を行う農水省の関わるつくば市の研究機関です。
■合鴨コシヒカリを作る 斎藤さん