さくらんぼ世界1トルコ共和国
トルコ共和国はサクランボの原産地であり、従来から世界のトップ生産量を誇り主要サクランボ生産国の一つです。近年は毎年、輸出国トップ4に含まれるサクランボ王国といえます。生食サクランボの甘果オウトウは主に中央アナトリア、エーゲ海、マルマラ、地中海の各地方で盛んに栽培されています。
トルコは世界有数の甘果オウトウ生産国で、近年輸出市場からの需要の増加を享受しているトルコの生産者は、新しい果樹園に投資し始めました。販売に適さない品種を伐採し、より競争力のある品種に改植しています。酸果オウトウという加工用サクランボによる果汁やジャムなどの加工品の製造にも新たな投資が行われています。
コンヤ、イズミル、マニサ、デニズリの各県は、これらの地方の中でトップのサクランボの主要産地である。サクランボの年間販売量は良好な天候と生育条件による良いシーズンのサクランボの総生産量が90万トンです。そのうち72万トンが生食用生鮮サクランボ、甘果オウトウ、18万トンが加工用サクランボ、酸果オウトウと見られます。
トルコでは加工用の酸果オウトウだけでも18万トンの生産量ですが、日本のさくらんぼの生産量は年ごとの変動はあるものの約1万6000トンという所からみると加工用だけで10倍の生産量があるわけです。やはり世界一のさくらんぼ大国といえます。
さくらんぼの栽培面積の変化
生鮮サクランボという生食用のトルコの甘果オウトウ栽培面積は10年前には増加傾向にありましたが、近年はわずかに減少しています。2024年度の甘果オウトウの栽培面積を約8万2千ヘクタールと推定し、酸果オウトウの栽培面積は2万ヘクタールにとどまると予想されます。
しかし、古い品種から美味しくて品質の高い新品種への移行もトルコ政府、トルコ農水省の後押しで進行しています。生産性の低い、古い果樹から付加価値の高い新品種への移行によりより輸出競争力がトルコ農水省の狙いのようです。
2023年度のサクランボの総栽培面積は2023年度よりわずかに少ない約10万ヘクタールと推計。全体として、サクランボの総栽培面積は、最高であった2018年度からわずかに減少している状況になっています。
トルコさくらんぼ品種の方向性
過去10年間で、トルコの果樹研究者は元々のナポレオン品種(日本にもある品種)の収量と品質を向上させようと試みて新品種の開発と品種改良が進んできました。また、具体的には品種改良の一環として、スレイマンデミレル大学のある研究者は、3つの高収量のトルコ型ナポレオン品種を開発してきました。
これらの改良に続いて、生産者らは古いトルコ品種のナポレオン甘果オウトウの果樹を改良品種に置き換えており、栽培面積が減少しているのに対し、生産量は増加していることが見て取れます。
トルコの公式データによると、2022年の国内のサクランボの推定果樹本数は合計約2,780万本であった。甘果オウトウの結果樹総本数は、10年間で1,800万本から2,200万本に増加した。加工になるサクランボの酸果オウトウの結果樹総本数は横ばいで推移しています。
トルコさくらんぼの収穫期間は
トルコでのサクランボの収穫は5月下旬に始まり、8月上旬まで続く。サクランボの出荷シーズンの正確な時期は地域や気象条件によって異なるが、一般的に、トルコのサクランボの収穫のピークは6月となります。
サクランボの収穫は5月下旬頃にイズミル県のエーゲ海沿岸で始まり、6月または7月にさらに内陸のアフィヨン、ブルドゥル、サリリ、コンヤの各地域で始まる。カフラマンマラシュ県では8月に収穫されます。
トルコさくらんぼの生産地とは
トルコのサクランボ生産地は多い所でもシェアが10%ほどで、数十%になる圧倒的な産地は無く、広く分散しているのが特徴です。地中海沿岸部の収穫が早く、内陸部の温暖地方から寒い地方へ移っていくことで、遅霜などの異常気象による被害の発生を分散できているのでしょう。
甘果オウトウは、主にトルコの中央アナトリア、エーゲ海、マルマラ及び地中海の各地方で栽培されている。コンヤ(10.3%)、イズミル(10%)、ブルサ(9.2%)、マニサ(7.3%)、アマスィヤ(5.8%)の各県は、これらの地域の中で最大のサクランボ産地である。※(%)は生産シェア。
サクランボ原産地で発祥トルコ
サクランボの起源となる原産の地がアナトリア地方北部であるため、トルコには多くの貴重なサクランボの遺伝資源があります。トルコでは100種類以上の甘果オウトウ(甘い生食用サクランボ)の品種がありサクランボが生産されています。
この豊富な遺伝資源を持つトルコの強みは品種改良であり、新品種の開発がサクランボ生産や桃などの核果類はトルコの農業に大きな未来を拓く武器になります。トルコのナポレオン品種としても知られる0900 Ziraat品種は、トルコで開発され、輸出市場で要求される高い品質特性を満たしているため、最も人気があります。
その品種の果肉はピンクと赤で、ハート形の果実は明るいイメージ。しかも、食感もしっかりしていて、ジューシーで、粒は非常に大きく、輸送に適しており、貯蔵寿命が長い特徴があり、秀逸な品種と言えます。
しかし、生産者は、より高品質の果実や遅い収穫時期(シーズンの後半に価格が上がるため)より高い収量を求めて、スイートハート(SweetheartSweetheart)、セレステ(CelesteCeleste)、アーリーロリー(Early Lory Lory)、コルディア(KordiaKordia)、レジーナ(ReginaRegina)、サム(SamSam)、サンバースト(SunburstSunburst)等の新しいサクランボ品種を試し始めています。
トルコのサクランボ生産者はまた、海外市場のニーズを探りながらより積極的な果樹園経営を試みる進取な経営姿勢が表れています。
甘果オウトウと酸果オウトウ
さくらんぼの分類は大きく分けて3つあり、セイヨウミザクラ(甘果桜桃)、スミノミザクラ(酸果桜桃)、シナノミザクラ(中国桜桃)に分かれます。
酸果オウトウといわれるスミミザクラ(Sour Cherry)は、ヨーロッパや南西アジアに自生するバラ科サクラ属の植物です。さくらんぼの多くの品種が由来する生食用、甘果オウトウのセイヨウミザクラ(Wild Cherry)という種に対し、スミミザクラの木の高さは4~10㎝と小柄で枝が沢山生え、茎が短く、実は黒っぽい色をしています。
果実はあまりにも酸味が強いので生食には向きませんが、スープや豚肉料理などに使われる事が多いです。また、砂糖とともに調理することで、酸味を抑えて香りや風味を引き出すことができます。
その為、スミミザクラの果実のジャムやシロップ、アイス、ジュースやリキュール、保存食もあり、調理用としてはセイヨウミザクラ(さくらんぼ)よりスミミザクラが好まれる場合が多いです。トルコのサワーチェリージュースやジャムはお土産としても大人気です。
さくらんぼの発祥地 ギレスン市
さくらんぼの歴史を遡ると発祥の地はトルコ黒海沿岸の気候が温暖なギレスン市に行き着きます。サクランボの原産地はトルコのギレスン市です。ギレスン市はトルコ北部の黒海に面し、穏やかな気候に恵まれたとても美しい街です。
海岸線からすぐに坂道が始まり、急勾配な坂道に沿うようにして建物が立ち並ぶ特徴的な街並みが海岸線と並行して帯状に連なっています。ギレスン市では4月になると桜が花盛りになり、町にさくらんぼが出回るようになります。ヘーゼルナッツの主要産地としても有名で山々にはヘーゼルナッツ畑が一面に広がっています。
さくらんぼ Cherry の語源とは
さくらんぼ、英名チェリーの語源は原産地ギレスンの古代名に。さくらんぼが英語でチェリー(Cherry)と呼ばれる理由も興味深いものがあります。調べていくと本当に興味深いです。
黒海沿岸のギレスン市の古代名はCERASUSUです。紀元前1世紀頃にこの町周辺でとれたさくらんぼが初めてヨーロッパで紹介されました。
ヨーロッパではこの町の古代名からCERISE(さくらんぼ色)と呼ばれたといいます。そこから、イングランドに渡ってシェリー(CHERY)となり、英語のチェリー(CHERRY)の語源になりました。
山形県寒河江市とギレスン市
日本でさくらんぼの名産地といえば山形県。そして山形県のさくらんぼといえば銘品「佐藤錦」です。この佐藤錦のルーツが、さくらんぼの原産地であるトルコのギレスンだというこというのをご存じでしょうか。
山形県のさくらんぼの本格的な栽培は寒河江市で、明治9年に始まりました。1万1,000kmを隔てたアジア大陸を旅したトルコの「さくらんぼ」を山形県で開発に取り組んでから100年かけて、“赤い宝石”ともいわれるほどの美味しい実をつけたのです。
そして驚くことに、トルコのギレスンと、日本一の山形県のさくらんぼの生産地寒河江(さがえ)市は、ほぼ同じ緯度に位置しているのだそうで、なんかご縁を感じてしまいます。サクランボはギレスン市から約2000年の時を経て日本までたどり着き、現在寒河江市ではたくさんの実を結び、一大産地を形成するまでに成長しました。
寒河江市は東根市、天童市に続き佐藤錦の生産量が山形県で3位の生産を誇ります。
道の駅 チェリーランドさがえ
山形県にある道の駅チェリーランドさがえにはトルコ館もあります。寒河江市にある「チェリーランドさがえ」は、シンボルであるさくらんぼをメインテーマに観光物産の振興と文化交流の拠点施設です。
寒河江市の魅力を県内外にアピールする情報の発信基地として整備し、1993年に「道の駅」として認定登録を受け、山形県でも最大級の規模を誇る道の駅で多くの観光客に利用されています。
そんなチェリーランドの中には「トルコ館」が併設されています。トルコ人建築家によって設計された建物は、オスマントルコ時代の建築をイメージしたもので、大理石・タイル・金具類の装飾品なども全てトルコから運んだ物を使用しています。
2階の「ギレスンカフェ」ではトルココーヒーやワインが味わえます。また、レストランコーナーにはトルコ料理レストラン「ボンジュック」があり、ケバブ料理やキョフテ、サバサンドなどトルコを代表するファーストフードを楽しむことができます。
トルコの粘りのある不思議な伸びるアイス「ドンドルマン」も人気でトルコのアイス職人によるパフォーマンも楽しめ、まるでトルコの街角にいるかのような気分になれます。
出典:(公財)中央果実協会、ターキッシュエア&トラベル(TURKISH Air&Travel)ほか