干し柿の分類は大きく2つ
干し柿には、大きく分けて「あんぽ柿」と「ころ柿」と呼ばれるものがあります。「あんぽ柿」は水分が50%前後含まれていて、ごく軟らかめの食感を持ち、表面には白い粉がないのが特徴です。
あんぽ柿は干し柿の製法のことを指します。品種ではありません。柿の種類は峰屋柿などの大き目の柿を使い、多くは福島県などで作られています。
あんぽ柿は、渋柿を硫黄で燻製した干し柿で、ドライフルーツの一種です。福島県伊達市梁川町五十沢地区が発祥で、大正時代に開発されました。水分率は約50%で、柔らかくジューシーな食感が特徴です。オレンジ色の果肉とゼリーのようなトロッとした食感が楽しめます。
あんぽ柿は、皮をむいた柿を硫黄燻蒸してから乾燥させて作られます。通常、干し柿の加工工程では、柿の皮むき後に「硫黄くんじょう」を行います。「硫黄くんじょう」とは、熱で硫黄の粉を燃やしその中に柿を吊るしてくん煙することです。それにより干し柿に添加されるのが「二酸化硫黄」です。
干し柿の硫黄燻蒸の目的とは
(1)干し柿の酸化を防止することにより果肉の色をきれいに仕上げる目的。
(2)制菌作用によりカビや雑菌の繁殖を抑え果肉を守る
(3)干し柿の乾燥を促進する意味でも使われます。品質向上の目的で行われます。
なお、硫黄の使用量および二酸化硫黄の残留量は、安全面、安心であり食品衛生上問題のない量ですので、安心してお召し上がりください。
ころ柿とは一般的な干し柿のこと
一方、「ころ柿」は、水分含有量が25%~30%ほどで食感は羊羹のようにもっちり・ねっとりとし、表面に粉が出ているのが特徴です。「ころ」は「枯露」と書きますが、これは朝夕の露によって湿り、昼は乾く(枯)この繰り返しにより干し柿ができることからです。また、よく転がし揉んで仕上げることから「転(がす)」の意味もあると言われています。
ころ柿は、柿の向きをコロコロと変えて丁寧に乾燥させたことから、この名前がついたと言われています。干す期間が長いため、硬めで羊羹のような食感があります。
ころ柿の原料となる「最勝柿」は、志賀町原産の干し柿専用種です。果実の形状は縦長の長円形で、先がやや尖っており、肉質は緻密で柔らかいのが特徴です。
市田柿は品種名で製法ころ柿
市田柿は、長野県伊那地方で生産される干し柿のブランド名です。長野県下伊那郡高森町の市田地域で栽培されていた渋柿の品種名で、栽培の歴史は500年以上と言われています。
市田柿は、一口大で食べやすく、鮮やかなあめ色の果肉をきめ細かな白い粉が覆い、もっちりとした食感と上品な甘みがあるのが特徴です。干し柿はころ柿とアンポ柿に分類されますが、市田柿はころ柿のタイプで、生柿に対する重量比で1/4程度まで干し上げられます。
市田柿は、天竜川の川霧が柿を自然に加湿し、ゆっくりと乾燥させることで、やわらかな食感を生み出します。2016年には農水省による地理的表示産品(GI)に認定され、販売額は日本一を誇ります。
市田柿とは、もともと下伊那郡高森町の市田という地域で栽培されてきた渋柿の品種です。 2016年には農水省による地理的表示産品(GI)に認定され、そこでは「飯田市、下伊那郡ならびに上伊那郡のうち飯島町および中川村」と産地が特定されています。
あんぽ柿は柔かい干し柿の製法
同じ干し柿でも水分が50%前後で柔らかいものは「あんぽ柿」、水分が25%から30%位で甘み成分が結晶化し白い粉が吹いてくるものを「枯露(ころ)柿」と呼んでおり、干す期間も長めである。
あんぽ柿は、蜂屋柿や平核無柿を使用して作られることが多いです。あんぽ柿作りに使われる柿は、水分が少なく糖分が多いもので、種は小さく少ないものが適しています。
あんぽ柿には、ビタミンAが生柿の時より2倍以上に増えます。ビタミンAには皮膚や粘膜を丈夫にする働きや抗酸化作用による代謝・免疫力UPが期待され、風邪やがん予防にも効果的だと言われています。
▼甲州市の名産品といえば、枯露柿(ころがき)。
枯露柿は昔から保存食として作られており、武田信玄公が推奨したことにより枯露柿の生産が広まったと言われています。
▼上山の干し柿
山形県上山市産の干し柿は、紅柿を吊るして加工したドライフルーツです。上山の高級品種、紅柿は上山市発祥の渋柿で、歴史は300年ほど前にさかのぼります。上山の干し柿は、早いもので11月末から出荷が始まります。一般的に紅干し柿は12月から出荷され、クリスマスくらいが食べ頃です。
干し柿にはβカロテンが豊富に含まれており、癌の予防にも期待ができます。食べる量としては、多くても1日に1個~1.5個くらいにしておくとよいでしょう。
ころ柿の産地は広く分布
一つずつ丁寧に作られる枯露柿は、透けるような飴色の美しさと、肉厚で甘く、食べると柔らかい食感で、干し柿の最高峰と言われています。
枯露柿とは、渋柿を乾燥させた干し柿のことです。
おいしくなるように柿の向きをコロコロと変えて丁寧に乾燥させたことから、枯露柿(コロガキ)という名前がついたと言われています。
枯露柿の生産は、11月上旬〜12月下旬頃に行われており、特に甲州市塩山の松里地区は、枯露柿の名産地として有名です。
枯露柿で使われる渋柿は、主に甲州百目(ひゃくめ)という350〜400gもある大きくて釣鐘形をした立派な柿です。甲州百目の名前の由来は、百匁(ひゃくもんめ/約375g)からと言われており、主に甲府盆地周辺で栽培されていることから、甲州の名がつけられています。
干し柿ころ柿の製造方法
製法は、はじめに手作業で柿の皮を剥き、燻蒸します。竹竿など長い棒に吊るして、雨の当たらない風通しのよい軒先などで20日間ほど乾燥させます。枯露柿は軒先などに吊るすことから、11月上旬頃になると枯露柿のカーテンをあちこちで見ることができます。この景色は、晩秋の甲州市の風物詩となっています。
特に枯露柿の名産地 甲州市塩山の松里地区では、古民家や庭先にたくさんの枯露柿が吊るされて、飴色のカーテンで彩られます。周りの山々の紅葉と相まって、情緒ある景色を満喫することができます。
また、塩山駅北口を出てすぐの旧高野家住宅「甘草屋敷」にもたくさんの枯露柿が吊るされています。甘草屋敷の中から見る枯露柿のカーテンは、枯露柿に陽があたり、オレンジ色の光が透けて見えて、とても幻想的です。
次に藁などを敷いた棚に柿を並べて棚干しをします。このときに一つずつ手作業で揉んで形を整えます。そして化粧箱に詰めて、完成です!
▼干し柿の風景