山形県のさくらんぼ栽培と特徴
山形県のさくらんぼ 山形県のさくらんぼの栽培面積は3,050ha(2019年)で全国の約7割、産出額は374億円(2018年)で全国の8割以上を占めています。
山形県はでは明治8年頃からさくらんぼの栽培が始まったとされています。雨に弱いさくらんぼにとって、山々に囲まれ空梅雨になることが多い山形の環境が非常に適していたことが、栽培が始まった大きな要因となりました。
また、山形県の地形が大きく関係します。山形県は高い山々に囲まれた盆地気候のため、梅雨や台風被害から果樹が守られます。また、さくらんぼが実を付けるのに必須である冬の寒さと、糖度を増すために必要である夏の猛暑も、さくらんぼ栽培の追い風になっています。
特に、大きな要因となったのは気候でした。 雨に弱いさくらんぼにとって、山に囲まれ空梅雨になることが多い山形の環境が非常に適していたのです。 当時は生食での流通が難しかったことから、缶詰用の栽培が主流だったと言います。 現在つくられている品種の最高峰は「佐藤錦」そして大粒の紅秀峰や超大粒の新品種「やまがた紅王」です。
さくらんぼの栽培と作業体系
さくらんぼは苗木を植えて、4年目ごろから花が少しずつ咲き少し実をつけますが、一人前(成木)にまるまでは10年間もかかります。 受粉の相性や、その地域に合った品種選びはとても重要です。 樹勢をコントロール出来ているさくらんぼの味は格別です。
●さくらんぼの主な作業
1月~3月 剪定 3月~4月芽欠き作業 4月中~下旬 5月中下旬 摘果作業 受粉 5月下旬 雨除けハウス 5月下旬~6月上旬 葉摘み作業 6月中~7月中旬 収穫作業7月中旬 収穫作業 8月下旬~9月収穫後ビニール被覆の撤収 8月下旬~9月収穫後:お礼肥の散布 園地の草刈り 10月~11月 元肥散布などです。
剪定から授粉までの作業と目的
1月~3月 剪定作業:厳冬下では木が傷むのでリンゴの剪定が終わる頃、2月下旬頃の冬に行います。選定した枝の片付け、整理します。
3月~4月芽欠き作業:サクランボの芽を適当な数に制限する作業、指先を使う細かな作業が2か月続きます。寒さが一段と身に染みる手先の作業で手袋は使うが手袋の先は切り取って使う。指先を出さないと微妙な感覚が伝わらないから。
●さくらんぼの品質は剪定が
高品質で美味しいさくらんぼを収穫するために基本となるのは剪定作業になります。剪定がしっかりと実践できることで、芽欠き作業(大粒にするために目の数を制限する)、摘果作業(サクランボの実の数を制限する)、葉摘み(サクランボの実に日光が届くことで着色がすすむ)そして大事な収獲作業がしやすくなり、それぞれの作業効率が高まります。
すべての果物に共通なのは「剪定は果樹づくりの基本。基本が大事だ」ということです。しっかりした剪定なしにしっかりした果実は出来ません。剪定の間違いは取り返すことは出来ないということです。
●芽欠き作業の目的
一つの芽の何個かの花芽の数を決めて、一芽ずつ細かな指先の作業。2か月くらい続きます。 開花前のつぼみの段階で余分な花芽 を摘み取り、残った花芽に養分を集中させることで、質の良い花を咲かせます。開花前に花の数を調整することは、その後に行う摘果作業の省力にもつながります。
4月中~下旬 受粉作業:相性のいい別の品種が必要です。佐藤錦には紅さやか、ナポンン紅秀峰など。毛バタキを使い手作業で行いながら。マメコバチや蜜蜂を使い授粉します。
人口授粉 作業の目的と要領
さくらんぼは、同じ品種だけでは実をならせることができません。実をならせるためには、異なる品種(受粉樹 )の花粉を雌しべに付ける必要があります。このため、園地には同一品種だけでなく、異なる品種(受粉樹)を組み合わせて植えてあります。
一方、受粉樹があっても、開花期に低温や強風に遭うとミツバチ等の訪花昆虫の動きが鈍くなり、十分に受粉しない場合があります。 人工受粉は、毎年安定した収量を確保するために行います。受粉樹が開花し、主力品種「佐藤錦」の開花が始まったら、作業を開始します。
●人工授粉の要領
1,人工受粉は、基本的に「佐藤錦」等の主力品種の花が樹全体の5分咲きになった時と、8分咲きになった時の最低2回行います。
2,初めに毛バタキを回転させながら花をなでるイメージで、受粉樹の大枝1本分の花粉を取ります。
3,次にこの毛バタキを回転させながら花をなでるイメージで、主力品種の大枝3本に花粉を付けます。
4,この作業を繰り返し、主力品種の全ての大枝に花粉を付けます。※受粉樹(じゅふんじゅ)・・・主力品種の樹に安定して実をならせるため、主力品種の樹の近くに植える別品種の樹。主に「紅さやか」や「ナポレオン」など。
5月 6月-7月の収穫作業まで
5月中下旬 摘果作業:授粉後に生理落果を確認後は小さな実が確認出来たら摘果作業に入ります。実の数を一定にするために、2回くらい実の数を制限して大粒さくらんぼをめざします。
葉の枚数に対して実の数が多すぎると、1つの実に分配される養分が少なくなり、果実が小玉になり、品質も低下します。「摘果」は、大玉で糖度の高い果実を生産するために、果実が生長する前に余分な実を摘み取る作業です。
5月下旬 雨除けハウス:5月の下旬には雨除けハウスのビニールかけ、収穫の準備です。高い所の作業は危険が伴います。園地の草刈り
5月下旬~6月上旬 葉摘み作業:摘果作業の後半から実の周りの日当りと空間を確保するため余計な葉っぱを制限するため葉を手作業で落とします。
サクランボ葉摘み作業の目的は
糖度の高い大きな果実をならせるためには、果実や葉にまんべんなく日光を当てることが大切です。「葉摘み」は、果実への日当たりを悪くしている葉や、果実に接触している葉等を摘み取る作業です。果実が赤く色づき始めた頃から作業を始め、収穫が始まる5~7日前まで終えるようにします。
●さくらんぼの葉摘みのポイント
1,1つの短果枝に最低でも大きい葉を4枚以上は残すようにし、手で摘み取ります。
2,枝を下から見上げるようにして、マメ葉(小さい葉)や果実に挟まれた葉を摘み取ります。
3,枝を上から見下ろすようにして、果実や枝に覆いかぶさった葉を摘み取ります。
サクランボ収穫作業と選別箱詰め
6月中~7月中旬 収穫作業:実を着色を見ながら3回くらいに分け収穫します。集荷のための選別、発送のための箱詰め、梱包作業など
●収穫作業のポイント
さくらんぼの収穫適期は、他の果樹と比べて短いことから、作業は計画的に効率良く進め、短期間で終わらせる必要があります。 また、さくらんぼの果実は傷みやすく、収穫後の日持ちが短いことから、丁寧に取り扱うとともに、収穫後の温度管理にも注意が必要です。
1,収穫方法には、果実の熟度や色づきを見ながら、適期に達した果実のみを選びながら収穫する「すぐりもぎ」と、収穫期に1本の樹になっている果実を全て収穫する「がらもぎ」があります。
2,収穫作業は、なるべく朝の涼しい時間帯に行い、原則として午前中に作業を終えるようにします。
3,腰に付ける収穫かごの内側には、果実が傷まないようにウレタンや布を貼り付けます。また、収穫かごの果実を移すコンテナにもウレタンなどの資材を敷きます。
4,収穫の際は、果実には触れず、枝に近い軸の付け根部分をつまんで、枝の方向に弧を描くように持ち上げて収穫します。
さくらんぼ捥ぎは熟練がいる
○軸をつまんで果実の方向に引っ張ると収穫しにくいうえ、来年以降に花芽を着ける短果枝が取れることがあるので注意が必要です。
○収穫かごの果実は、重みで傷まないようこまめにコンテナに移し、コンテナはできるだけ日陰の涼しい場所に置きます。
○表面や実割れした部分にカビが生えた病害果は、地面には落とさず、収穫かごとは別の袋に入れるなどして、後で園地の外に運び出して処分します。
さくらんぼ選果とパッケージング
果実の大きさや着色程度等の規格ごとに選別して、出荷箱やパックに詰めます。収穫作業と同様に果実が傷まないよう丁寧に取り扱います。 選果作業は、専用の機械を利用する場合もありますが、ここでは手作業による方法を説明します。
1,コンテナに入った収穫後のさくらんぼを作業小屋などに設置された選果台(大きなテーブル)に広げます。
2,選果板(スケール)を使って、果実を1つずつ大きさや着色程度で分類し、箱やパックに詰めていきます。
さくらんぼ収獲が終わり畑の管理
7月上旬~中旬 ビニール被覆の撤収:5月に広げた雨除けハウスのビニールを終わったところできるだけ早く取り除く
8月下旬~9月 収穫後お礼肥の散布:来年の生育のため栽培のための栄養をこの頃供給します。夏季剪定:生育に障害になる枝を選定します。 園地の草刈りもこの頃に行います。
10月~11月 元肥散布:堆肥施肥な来年以降の土づくりのために行います。堆肥は完熟のものを使い3年に1度を目途に多めに施します。雨除けハウスのパイプの管理や作業機や防除機の整備をする 園地の整理などします。
さくらんぼ作業の大きな問題は、生産者の高齢化と季節作業の労働力の不足による作業体系の維持が課題となっています。
▼さくらんぼの作業体系 選定から収穫まで